武道とは何か

武道という言葉は、日本人であれば誰でも馴染みがありますが、言葉の定義はあやふやである
と思います。武道という格技があるわけでなく、日本の格技の総称として使われます。
また、明治以降に作られた新造語でもあり、戦後のGHQによる武道禁止政策を経たために、結
局、個人勝手な定義として使われているのが現状ではないでしょうか。

まず、個人の認識をできるだけ正確に伝えるために、最初にしなければならいのが、言葉の定
義です。
ここでは、一つ一つ説明していきますが、あくまで私の認識であり、私の認識を伝えるための手
段であることをお断りしておきます。

1−1 武道と武士道の違い
武道(広義の意味の武道:武術を含む)というと、生理的に嫌悪感を持つ人がいます。
 最初に公開したときに、武道を経験していない人や女性の聴講者もいらしたのですが、この辺
を最初に整理することによって評価を受けました。

武士道の定義
武士道とは一言で言うと「君主に仕える道」ということが出来ます。
 君主に対して命を掛けて仕える事ができるか。
 その仕事に失敗したら、責任を取って腹を切れるかということなのです。

武道の定義
武道とは、武技を駆使して相手を制し、自分の生命身体を護る方法の総称です。

 一般人による武道及び武道家の持つイメージについて

   明治維新まで主に武道を行う人  → 侍

   敗戦まで主に武道を行う人     → 軍人

 というように、武道を行っていた人の立場が前時代的であるのとダブって、 嫌悪感を抱く人が
いるのではないかと思います。
 それは「武道」と「武士道」の定義及び、歴史観が曖昧だからなのです。




1−2 武道とスポーツの違い
よく、「柔道は武道か、スポーツか」というような議論があります。
 この議論も中々結論が出ないまま、最近はあまりされなくなりました。
 この議論は、日本が敗戦により武道が禁止され、それを許可してもらう為に、武道をスポーツと
して言い換えているという歴史的経過があるために複雑になっていることも事実です。

 また、それに代わって、最近は「武道か、格闘技か」というような分類ができてきました。新しくで
てきた総合系の格技の分類を、伝統武道に入れないで呼称するためにできたように思います。

 例えば、柔道自体も明治15年に出発したときは、それまでの伝統武術とは一線を画していまし
た。柔術とは言わないで柔道という呼称を用いています。

 私としては以下のように定義しています。





武道(武術)の定義 : 殺傷技術が前提にあったもの

 スポーツの定義   : 娯楽、競技が前提のもの

柔道はスポーツか
 柔道は嘉納治五郎氏が始めたものであり、戦前までは武器の研究も行われていました。
 昭和2年に制定された「精力善用国民体育の形」は、空手の基本動作です。(回しげりや後ろげ
りもある)
 当時、空手が本土に紹介された直後であり、船越義珍氏や摩文仁賢和氏を講道館に招いて、
空手の研究をしています。
 また、戦後の昭和27年制定の講道館護身術には、武器を使用した形があります。
 現在の柔道競技でも絞技が存在していることを鑑みれば、「柔道は武道」と呼称すべきであると
思います。

柔道と柔道競技
 さらに明確に分けるとするならば、柔道は武道であるが、柔道競技は武道に含まれるスポーツ
の部分であるといえます。
 従って、私からすればオリンピック競技の槍投げも、殺傷技術が前提ですから本来は武道です
が、競技としてはスポーツという認識です。
ぞれぞれの人に目的があり、目的が違えば認識も違います。
 ただ、私がここで展開していることは「認識」についてですのでそれぞれのテーマは練習課題と
して見ていただいて結構です。
 上達するとか、技術を身につけるというのは、身体的認識があがることなのです。



 

1−3 武術と武道の定義
武術の定義:古伝(明治以前からある)の武道一般をさす
武技を駆使しての護身術(禁止技なし)
 練習体系の秘密化
 例:柔術、剣術、槍術

武道の定義:明治以降に改良もしくは創始されたもの
明治以前からあって、競技になってルールが設定されたもの
 練習体系の公開
 競技を前提にしたもの(禁止技の設定)
 例:柔道、剣道

両方に跨るもの
空手道、合気道

 競技空手(現代空手)と古伝空手では同じ空手であってもカテゴリーが違うという捉え方です。し
たがって、目的や練習体系も違ってきているのでしょう。
 一人一流というのが実態ではないでしょうか。
 ただ、後世に伝えるためには言葉の定義は大切なことだと思います。



 

1-4 武道と護身術
 現代の武道は競技を主体にして発展している為、防御だけでは勝てないので攻撃を重視してい
ます。
 従って、競技ではない本来の武道という意味で護身術という場合があります。

護身について

 狭義の定義
不当な暴力から自分の生命を護ることをいう。
 相手の暴力を封じる方法として、その効果の上から次のように分けられる。
 1:相手の生命を奪う場合
 2:相手の生命を奪うまでには至らないが障害を与える場合
 3:相手の身体に障害を与えないで、暴力だけ封じる場合

 もちろん3:が護身術としては最高のレベルなのですが、これを実現するためには相手より数段
上の実力がなければできません。その為にも、不断の練習が必要なのです。
 特に「相手の身体に障害を与えないで」というのは難しいことです。
 柔術では「痛覚」だけ与えて、「障害」を与えないようにと習います。

広義の定義
安全教育です。武技に頼らない護身でもあります。
 「君子危うきに近寄らず」「備えあれば憂いなし」と言われるように、
 1:人災 技術革新のもたらしたもの(交通災害、公害など)
 2:天災 人為を越えたもの (地震、台風、水害)
 3:病気 

 俗にいう地震、雷、火事、親父(ヤベ-)がその対象でしょう。
 1:と2:は安全教育として、3:は健康教育として現代人の課題であると思います。
 道路交通法を学ぶことも広義の意味での護身なのです。

 
1−5 道について
何々道と「道」をつける呼称が日本ではよく使われますが、「道」とは何なのでしょう。
 スポーツでさえ「野球道」「蹴道」のように道をつけて表現することがあります。
 これらは、「技術+精神」を表現したいのだと思いますが、そのような使い方で良いのでしょう
か。

一般的な見方 その1 (精神=道)
単なる技術の向上のために修行を行うのではなく、修行することによって精神を修養し人間完成
として道がある。
 そのため、従来の〜術を〜道へと改名されるようになった。

一般的な見方 その2 (理想=道)
道というのは、理想であって遠くにあるものである。したがって、常に道に近づくように努力すれ
ばよい。

ちょっと物知りな見方
明治以前まで術といわれていたものが、嘉納治五郎の柔道の命名により影響を受け、それ以降
〜道と改称された。

武道をやると人格形成ができるのか
嘉納治五郎先生は「何十年間竹刀で技術を練習しても、投技や逆技の練習をしても、そういう練
習や研究からは尊王の精神も道徳も発生してこない」と言いきっています。
 また、「それでは、昔の武士がなぜに武技にも長じ、武士道も心得ていたかというに、それは武
術を修めると同時にそういう教えを特に受けていたからである」といっています。
 要するに、武道の練習だけでは人格形成はできないということなのです。
 講道館柔道の目的は「体育、勝負、修心」であり、これらを収める方法として「乱取、形、講義、
問答」を定めています。





道の本来の意味
誰でも安全に技術の修得ができるカリキュラムのことをいう。
 誰でもその道路(道)を歩けば、同じ目的地に着くのである。
 嘉納治五郎氏先生は、古流柔術より原理を抽出し合理的な練習方法を公開したと同時に、「講
義、問答」をセットで教えることを発案し、柔道を学問として位置付けています。

 
1−6 嘉納治五郎の柔道
一般的には形中心の前時代的な練習体系を改めて、乱取り(試合形式)の練習体系を採用し現
代化を図ったとされますが、乱取練習は嘉納治五郎先生が習った柔術にすでに存在していまし
た。

柔道の意義
 講道館柔道の目的は「体育、勝負、修心」でありこれらを収める方法として「乱取、形、講義、問
答」を定めていますが、特に注目すべきことは、技術の中から術(自然体の理、柔の理、崩しの
理)を取り出し、「術」のみを初心者にもわかるように教える練習体系を作ったところにその真髄
があります。
 (現在は言葉のみが存在しているように見受けられる)

 最終的には維新により廃れていく素手武術を柔道に包含し、突き蹴りを含めた乱取を最終目
的にしていたようです。

 さらに嘉納先生は、柔道原理を生活のあらゆる面に応用することを理想とし、「精力善用」「自
他共栄」の精神を説いていきました。

 このことは嘉納先生の中では一貫していることでも、他から見ると、技術だったり、競技だった
り、護身術だったり、哲学だったりと色々な面が見えるのでしょう。
 そこに道という言葉の混乱があるのではと思います。

 私は以下の様に言葉を分ける方が、解りやすかったと思っています。

 術:技術
 道:カリキュラム、練習体系
 法:精力善用、自他共栄 

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